第2回小林真理声楽マスタークラス 開催報告 & 第3回開講告知

日仏現代音楽協会では、協会名誉会員でフランス在住のメゾ・ソプラノ歌手小林真理さんのご指導による第2回声楽マスタークラスを、今夏7月25日と26日に川崎の音楽練習スタジオと中目黒のジョイフル・スタジオにて開催致し、受講生10名の方々によりレッスンの12枠が全て埋まるという盛況のうちにこれを終えることが出来ました。
ご報告が大変遅くなりましたが受講生、聴講生、伴奏ピアニストとして前回ご参加頂いた皆様に、この場をお借りして協会より深く御礼申し上げます。(第2回マスタークラスの詳細や雰囲気については、受講生3名の方々よりお寄せ頂いた愉しいレポートを下に掲載しておりますのでご覧頂ければと思います。)

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さて好評を得ました前回、前々回に引き続き、来る12月26日と27日の両日にわたって、第3回小林真理声楽マスタークラスを開催する運びとなりました。小林さんはフランスを中心に古楽から現代作品に至る幅広いレパートリーで国際的なご活躍をされております。またストラスブール国立音楽院をはじめニースやボルドー他のアカデミーでも後進の指導に熱心に取り組まれています。フランス歌曲やフランス語オペラはもとより、古典や近現代のレパートリーを学ばれたい方も、ふるってご参加下さい。

講師プロフィール

小林真理

IMG_3110 © Marta Kohler

鎌倉市生まれ。3歳よりピアノを始め、10歳より中村浩子女子に師事し声楽を学ぶ。
1979年東京芸術大学音楽学部声楽科を卒業、同大学院修士課程に進み、1981年文化放送音楽賞受賞、第1回日仏声楽コンクールに入選、フランス音楽をより深く学ぶために留学を決意し、1982年フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に入学、レジーヌ・クレスパン女史に師事、1987年同音学院のオペラ科を終了、1989年にはウィリアム・クリスティ氏の指導する同音学院の古典声楽科のクラスを1等賞を得て終了する。パリ国立高等音楽院に在籍中の1983年頃より数々の国際声楽コンクールにて受賞(1984年パリのフランス歌曲国際コンクールでフォーレ賞、1988年クレルモン・フェランのオラトリオ・リート国際コンクールではリタ・シユトライヒ・記念大賞)この頃よりバロックから現代音楽に至る幅広い演奏活動を始める。
1993年には その後進学した東京芸術大学博士課程において博士論文『オリヴィエ・メシアンの歌曲研究ーハラウイを中心にー』を書き、博士号を収得する。

コンサート活動においては ピエール・ブーレーズの指揮でシヤトレ劇場でハリソン・バートウィッスルの〔メリヂアン〕のフランス初演、フランス国立管弦楽団、フィルハーモニック・オーケストラと共演、オランダのコンセルトゲボー・ホールにてシェーンヴェルクの〔4つのオーケストラ歌曲作品22〕、佐渡裕指揮でオーケストラ・ラムルーとマーラーの交響曲第2番、現代音楽作曲家の初演は数多く、アンサンブル・アンテルコンタンポランと数度共演、ロストロポーヴィッチの指揮で小林真理のために書かれたピヨートル・モスの〔スターバート・マーテル〕、最近ではフィリップ・ルルーの新作をロレーヌ国立管弦楽団とフランスとドイツで初演、ヨーロッパのみでなく、アメリカ、東欧、オーストラリアにてもソリストとして活躍している。
オペラの分野では ジェフリー・テート指揮によるベルクの〔ルル〕の女流工芸家役、プッチーニの〔蝶々夫人〕のスズキ役、モーツァルトの〔コシ・ファン・トウツテ〕のドラベラ役、ヴィヴァルディの世界初演〔真実の証〕のルステーナ役などを演じている。
cd録音も多数に及び、モーツァルトの〔レクイエム〕、〔マニュエル・ロ-ゼンタール歌曲集〕、〔20世紀の作曲家の編曲による世界の民謡〕などがあり、最近では、フランスを代表するサクソフォン奏者、クロード・ドラングルとの〔japanese love songs〕、メシアンの〔ハラウィ〕などがある。

1999年にフランス国家教授資格を得て現在ストラスブールの国立音楽院で声楽の専任教授を勤め、ニースのアカデミー他、各国でマスタークラスを行い、後進の指導にも情熱をそそいでいる。

倉敷の大原美術館のギャラリーコンサートに計3度出演した他、2013年にはフランスの各地でオーケストラとワーグナーの「ヴェーゼンドンクの歌曲」を数回歌い、同年10月25日には東京シティフィルとプーランクのオペラ「カルメル派修道女の対話」〔演奏会形式〕の修道院長の役を歌って好評を博した。

(当協会のホームページで小林真理さんへのインタビューを掲載しております。合わせてご覧下さいませ。)

日時
12月26日(金) 13:00~22:00
会場 : 川崎駅近くの音楽練習室(詳細は協会事務局にお問い合わせ下さい)
12月27日(土) 14:00~21:00 (予定)
会場 : サロンフェリーチェ(目黒線洗足駅徒歩3分)

対象
受講生
– 声楽を専門的に学ばれている方
– フランス歌曲やフランス語オペラを学ばれたい方
– 声楽分野でフランスへの留学を希望されている方
– フランスにおける声楽教育を体験されたい方
– 声楽の初心者やアマチュアで学ばれている方
聴講生
-専門的な知識の有無にかかわらず、興味のある方はどなたでも聴講可能です。(事前に事務局へのお申し込みが必要です。)

レッスン形式
– 基本的にお一人様1時間の個人レッスン形式となります。お申し込みの際に上記の日時の中でご希望の時間帯をお知らせ下さい。お一人様で2時間続けての受講や、2日にわたって二枠計2時間の受講も可能です。
– 受講曲目は自由です。2、3曲程度ご用意下さい。事前に講師とご相談も頂けます。
– 伴奏者は基本的にご自分でお連れいただきます。あてのない場合は協会事務局にご相談下さい。(その際にはご希望日時と曲目をお教え下さいませ。)
-受講生は会場の定員の範囲内で他の受講生のレッスンも自由にご見学いただけます。

参加費用
-受講料 : 23,000円 (お一人で二枠受講の際は+15,000円となります)
-聴講料 : 2,000円 (2日続けての場合は通しで3,000円)

お申し込み・お問い合わせ
日仏現代音楽協会事務局
メール : nichifutsugenon@yahoo.co.jp
☎03-5389-0317 (Fax兼)


<第2回小林真理声楽マスタークラス受講生の皆様方よりいただいたレポート>

☆1er rapport

真理先生のレッスンは、とにかくアグレッシブです。レッスン中は、椅子に座ることはまずなく、ずっと音楽とともに、立ちっぱなしです。(なので、汗ふきハンカチと、お水のペットボトルは、真理先生のトレードマーク) さあ、次の受講生は…。

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先生が、何にアプローチするかは、一人一人違って、テクニックにアプローチするのか、発音についてなのか、読譜からどう音楽を生むか、役作り、詩の解釈、テキストの選択の大切さ、などなど、数時間はあっという間に過ぎます。
ニースの講習会でも、同じレッスン風景だったことを思い出します。受講生も聴講生も、先生の言葉をメモしたり、録音したり、とても充実した時間でした。
そして、真理先生の大好きな、打ち上げです。そこでは、歌の話、ストラスブール、パリの話、珍道中!?、旅話、舞台の裏話、など、盛り上がります。

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その楽しい時間も、あっという間に。また、お会いしましょう!と、小走りに地下鉄に入って行かれました。今頃はもう、コルシカで講習会でしょうか。

高橋淑子 (第2回マスタークラス受講生/講習会インスペクター・声楽家・日仏現代音楽協会会員)

☆2me rapport

真理先生のレッスン
私が真理先生に初めてお会いしたのは、もうかれこれ15年程前。何かを何とかしたくて、でもそれがわからずただもがいていた頃でした。文字通り目から鱗、身体を使って「歌う」ということを、原点に返って学び直さなくてはと気づかせてくれたことを憶えています。

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できない自分に落ち込む事もしばしばですが、いつも嘘のない先生の姿勢に、メンタルも鍛えていただいたと思っています。そう、真の優しさを持って、真理先生は私たちに向き合ってくださっているのです。

柚木たまみ (第2回マスタークラス受講生・声楽家・日仏現代音楽協会会員)

☆3me rapport

指揮法講座に続き、この度も会員でピアノ弾きである私の“フランス歌曲初心者”、“ピアノ伴奏者”、“聴講生”という3つの立場での体験記として、この充実の講座を終えての印象を書かせて頂きたいと思います。
7月末に開講されたこの2日間は、よりによって記録的な猛暑でしたが、小林先生は南仏の海岸からそのまま潮の香りを運んでいらしたかのような涼やかな出で立ちで、レッスン内容は、ニースの陽光のようにとてもエネルギッシュでした。
マスタークラスは、午後一番から夜の10時近くまで川崎の音楽室で、翌日は中目黒のジョイフルスタジオにて、小林先生の情熱的で的確なレッスンがみっちりと展開されました。レッスンの合間には、陽気な小林先生を囲んでの和やかなおやつタイムでの談笑、そしてクラス終了後のお食事会、打ち上げまでもが、本講座の大事な時間でした。

昨年に引き続き、やはりレッスンでの中心的課題は発声、発声、発声。
「喉を開いて!!」
先生は、何気なくお話しされる時でさえ、最高なコンディションで発声されるので、レッスンで体感する音響はとても心地良く、しかも先生が実演される歌の発声を聴かせていただける訳ですから、なおさらです。さて、自分で発声するとなると、自分の身体であってもコントロールするのは並大抵のことではないことを学びます。
体の支えがしっかりしていれば、喉で押すこともなく、細く遠くまで(オーケストラであっても埋もれずに)響き渡る声が出せるということ。
「ハーモニーのある声質でなければ!!」
なるほど。旋律だけでなく常にハーモニーと共に演奏するピアノ弾きにとっては、旋律だけに命を吹き込むことはなかなか抵抗があることだけれども、聴衆を魅了する豊かな声というのは、それだけで倍音を多く含んだハーモニーを伴う声なのだと、はたと気づかされます。特に、今回私がピアノ伴奏させて頂いたモーリス・ドラージュの『7つの俳諧』という曲では歌とピアノ(室内楽のバージョンもあるようで、小林先生はその版でかつて演奏されたようです)とのアンサンブルが難しく、双方がかなり入り組んでいますので、そんな時こそ本当にハーモニー感のある声であれば、質の高い綾織りなしが実現するわけですね。先生が教鞭を執られておられるストラスブール国立音楽院での歌曲コースは“室内楽コース”として扱われているとのことです。
「声楽は器楽のように」
ピアノ弾きは逆を言われますね(笑) どこか朗々とレガートで・・・が“歌う”ということだと曖昧に勘違いされていることに危惧しての、先生のこのお言葉でした。

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ここで、声楽におけるもう一つの重要な“発音”についてのお話が入ってきます。
フランスから久しぶりに日本に帰国されると、まず先生は街中での日本人の会話の声が大きいと感じるそうです。その原因として、小林先生は母音で話す日本語と、日本語にはないテンションの高い多くの子音がある西洋の言語の発音の違いを挙げていらっしゃいます。様々な種類の子音を区別して、正確に発音なければ、歌に引きずられ何を言っているのか聴衆には伝わらない。そんな時、器楽的と言われる“リズム”の問題にも直結していきます。ここでふと、音楽はもともとギリシャの言葉の中にあったものだと言われていることを思い出します。ギリシャ語の中にリズムも抑揚も含まれていたのだから、そもそも“音楽”という独立した分野はもともとなく、言葉を徹底的に磨くことが、もはや音楽そのものの行為であり・・・。詩は音楽。私が今回選曲した、プーランクと詩人ポール・エリュアールとの幸福な関係から生まれた歌曲のように。

全講座を通して、小林先生は言語と音楽の結びつきについて手厳しく熱心なご指導、ご注意をしてくださいました。特にフランス歌曲初心者として受講した私のレッスンは、なんとフランス語の語学講座にすり変わってしまったほどでした(笑)。発音記号の認識の甘さを反省し、正確な言語の発音の大切さを身を持って自覚できたことが本当に有意義でした。
「声楽を勉強する上で、まずなんとなく旋律に歌詞を付けて歌うような練習は、いつまで経っても上達しないわ。旋律は旋律、言語は言語の練習がそれぞれちゃんとできるようになってから、それから歌と言語を結び付ける(合体させる)作業が始まるのよ。」
声楽とは・・・正に言語と音楽の幸福な関係。
なんと根源的なことに向き合っていることでしょう!!ラテン語の聖書からグレゴリオ聖歌が生まれ・・・レチタティーボ、アリアのあらゆる可能性を求めて変遷していったオペラ、20世紀のシェーンベルクの『月に浸かれたピエロ』のシュプレッヒゲザングに至るまで、そして現在も言語と音楽の関係性については模索の道が途絶えることはありません。
さすがに古典から現代までのレパートリーを持ち、フランス語は勿論、それ以外の言語にも精通していらっしゃる小林真理先生の、発声ひとつ教授するお言葉の中にも英知が感じられ、それは声楽に留まらない、普遍的な内容でした。

今回、拙い私のプーランクの歌曲の伴奏には、畏れ多くもピアニストとしても素晴らしい作曲家の夏田昌和先生にお願い致しました。事前に合わせもして頂いたにも関わらず私の語学勉強の未熟さから、用意した4曲のプーランクの歌曲のうち、最後の1曲、大好きな“Les chemins de l’amour ”がレッスン中にできなかったということはとても残念でしたが、次回への楽しみを残して終わったのも良かったのかな・・・と。
普段ピアノ伴奏をしている自らの立場と一変、歌手の立場からピアニストに、「ここはリットしないで前に進んでください」と、息の都合から、かえってテンポ通りに弾いてほしいと要求したくなる歌手のリアルな立場も経験できたことも、ピアニストとしてこの声楽マスタークラスを受講させて頂いた1つの成果でした。ありがとうございました。

瀬川裕美子 (第2回マスタークラス受講生/伴奏者・ピアニスト・日仏現代音楽協会会員)