「日本の作曲家達」vol.1

もう一年ほども前の事になってしまいましたが(ご報告が大変遅れてしまい申し訳ありません)、日仏現代音楽協会のフランスでの初めての主催行事として、2014年6月4日にパリ日本文化会館小ホールに於いて「日本の作曲家達」と題したシリーズ演奏会の第一回目が開催されました。
パリ日本文化会館は、日本文化を伝統芸能から現代文化まで多岐にわたってフランスに紹介する目的で創設された機関です。1997年のオープン以来、国際交流基金を通じて日本から招聘された伝統芸能や現代舞踏の芸術家達による公演や日本映画の上映、伝統工芸や絵画の展覧会など様々なイベントが定期的に催され、ガラス張りの瀟洒な会館内は日本好きのフランス人達でいつも賑わっております。
この度「伝統芸能だけでなく、日本の近現代の作曲家をフランスに紹介できる機会を作っていただけないか」という私の申し出を会館側が承諾して下さり、年に一度のペースで日本人作曲家達の室内楽作品を集めた定期演奏会を行う枠を設け、私がその企画プロデュースを担当させて頂く運びとなりました。

そんな日本人作曲家紹介企画の第一弾として、今回は三善晃、黛敏郎、武満徹、細川俊夫という日本の近現代の作曲の歴史を担う作曲家4名の作品に、気鋭の若手作曲家、坂東祐大の新作を加えた5作品が発表されました。

世代の違う個性豊かな日本人作曲家達が、ヨーロッパ音楽の語法や西洋楽器を用いた創作活動を展開していく中で、個々の美学・哲学的観点から「日本人」というアイデンティティーをどのように位置づけていったのか。彼らの芸術的模索や懊悩、そして時代の移り変わりがもたらす創作への影響などを音楽作品を通じて垣間みることは、日本人はもちろん、フランス人の方々にとっても大変興味深い体験だったようで、広く宣伝したわけではなかったにもかかわらず沢山のお客様にお越しいただき、大盛況の演奏会となりました。

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まずは三善晃氏の「フルート、チェロ、ピアノのためのソナタ」(1955)が演奏されました。この作品は三善氏がパリに留学中の頃に書かれたもの。三善氏が「ソナタ形式という純ヨーロッパ的時間構造を通じて、日本人としての感性や考え方をいかに表現できるか、という問い」として残した一連のソナタ集のうちの一作にあたり、アンリ・デュティユーから受けた多大なる影響がそこかしこに感じられる作品です。

次に黛敏郎氏の「チェロのための《文楽》」(1960)が演奏されました。この作品は題名の通り、文楽から直接インスピレーションを得て書かれた作品で、三味線の奏法や音色、太夫の節回しの表現などが存分に応用されています。世界の名だたる国際コンクールの課題曲などにも取り上げられるこの作品は、チェロ奏者の間では既にスタンダードなレパートリーとなっているようですね。若手チェリスト加藤文枝さんによる暗譜での素晴らしい熱演に、会場のみなさんも魅了されていました。

続けて演奏されたのは、武満徹氏の「フルートソロのための「声」《ヴォイス》」(1974)。この作品も世界中で頻繁に演奏されているものの1つですが、尺八の奏法に見られる重音、息の音、微分音などをふんだんに取り入れた書法で書かれています。フルート奏者は演奏を続けながら、所々で滝口修造の「手作り諺」の一句《誰か?まずは物を言え、透明よ!》のフランス語訳と英語訳を朗唱します。今回演奏して下さったフルート奏者のキム・ミヒさんは、すでに数限りなくこの作品を演奏され「今回は少し違った解釈で演奏してみました」とのこと。私が今迄聴いたこの作品の演奏は比較的アグレッシヴなものが多かったのですが、キムさんの演奏には静的・内省的ながらも心に強く響くメッセージ性を感じました。

細川俊夫氏の「フルートとピアノのための《Lied》」(2007)。上記の3人の作曲家より一回り若い世代に属する細川氏の作品は、フルートのパートが「歌詞のない歌」として扱われており、氏の主要作品の多くに見られる様々な書法(素材や手段の限定化、音響の密度や音域・音強のコントロール等によって音楽的身振りを次第に増強させるプロセス、時間の膨張や有形化)がふんだんに展開されています。フルートによって水平に展開・提示された素材をピアノが音響的に補完・持続することで2つの楽器が互いに呼応し合う、そんな美しい音世界を、フルートのキム・ミヒさんとピアノの檜山和子さんがピッタリと息の合った演奏で示してくれました。

演奏会の最後を締めくくったのは、坂東祐大氏の「フルート、チェロ、ピアノのための《Damier Material II》」(2014)の世界初演。
今回新作を書いて下さった坂東祐大氏は、東京芸術大学博士課程に在籍中の1991年生まれ。「今時の若者世代」らしく、上記の4名の作曲家とは全く違った視点で日本文化について捉えていらっしゃいます。
「若い世代の日本人作曲家にとっての日本の現代文化といえば、「マンガ」「カワイイ」「原宿」に代表されるようなもの。幼い頃からアニメを観て育った我々にとって「侍」「浮世絵」などに象徴される伝統文化より、そういったものの方がずっとなじみ深いのです。そして私は現代人として、溢れかえる膨大な情報群の中から自らの審美眼で情報を収集し選択をすることに興味を持っています。この作品もそういった観点から書かれています。この作品においては「2つの全く異なる素材が互いにダミエ(市松模様)のように継続的に絡み合う」というアイディアが基になっており、2つの素材の関係性が、時としてピントのずれた状態(判別不能な状態)になりながらも、曲を追うごとに次第に発展・進化を遂げて行きます。この発想を展開するにあたり、私はルイ・ヴィトンの「2013年S/Sダミエコレクション」からヒントを得ました。パリ生まれの洗練された大胆なファッションと日本の文化が、新しい形で融和・昇華されることを願います。」(坂東祐大氏のプログラムノートより(元はフランス語))

複雑なリズム構成を持ったなかなか演奏困難な作品で、パリまで初演の立ち会いに来て下さった坂東氏がリハーサルで指揮をするという一幕もあったようですが(笑)、本番での奏者達の熱演は圧巻でした。さすが!
終演後お客様方、特に若い人達から「バンドーの作品は大変興味深かった」という感想を沢山頂きました。

日本の近現代作曲家の先人達が紡ぎ上げて来た歴史と、その歴史を新たに塗り替え切り開いてゆく若い才能。限られた条件の中とはいえ、優れた日本の音楽作品をフランスの聴衆にご紹介出来た事は私にとっても自分の音楽家としての在り方を見つめ直す意味で大変勉強になりました。
魅力的な新作を書いて下さった坂東祐大さん、心のこもった演奏を披露して下さったアンサンブル•ミュルチラテラル奏者のキム・ミヒさん、加藤文枝さん、檜山和子さん、素晴らしいプログラムノートを書いて下さった作曲家・音楽学者の宮川渉さん、そしてお世話になったパリ日本文化会館のみなさまに心より御礼申し上げます。

次回の「日本の作曲家達」演奏会は、2015年12月2日(水)開催の予定です。日仏現代音楽協会名誉会員でもあられる、メゾソプラノ歌手の小林真理さんと、作曲家・ピアニストとしてフランスを中心に活躍中の棚田文紀さん。このお2人のデュオによる演奏で河田文忠、林光、八村義雄、柴田南雄の作品に加え、新進の若手作曲家、網守将平氏の新作初演をお届け致します。お楽しみに!(阿部加奈子 記)

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「日本の作曲家達」vol.1
2014年6月4日(水)18時30分開演
パリ日本文化会館小ホール
http://www.mcjp.fr

プログラム

三善晃(1933-2013) フルート、チェロ、ピアノの為のソナタ(1955)
黛敏郎(1929-1997) チェロのための「文楽」 (1960)
武満徹 (1930-1996)  フルートソロのための「声」 (1974)
細川俊夫(1955-) フルートとピアノのための「Lied」 (2007)
坂東祐大(1991-) フルート、チェロ、ピアノのための「Damier Material II」 (2014, 世界初演)

演奏
アンサンブル・ミュルチラテラル
キム・ミヒ、フルート
加藤文枝、チェロ
檜山和子、ピアノ

演奏会の録画
三善作品 https://www.youtube.com/watch?v=9a608FgbDlY&feature=youtu.be
黛作品 https://www.youtube.com/watch?v=pslfbvg8rWs&feature=youtu.be


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